2012年5月14日月曜日

Matrixの新作リストにWitP 2はありませんでしたが


2012年4月下旬にイタリアの高級リゾートホテルでMatrixのプレスイベントが開催され、その模様がMatrix/Slitherine Press Event - 4/23/2012で紹介されています。今後、Matrixから発売される予定の多数のゲームの概要もそこでみることができますが、残念ながらWitPの続編の発表はありませんでした。そこで、WitP AEのフォーラムにMatrix/Slitherine Press Eventというスレが立てられ、前者のスレにWitP AEのプレイヤーがWitP2の開発を希望している旨のレスをたくさんつけたことを紹介すると、+1する人が続出。それに対して、WitP AEを開発チームの一員であるJWEさんが
遊び半分でポストすべきスレかどうかよく考えた方がいい。Erikはハンバーガーを売ってるわけじゃないんだ。Matrix (Matrix/Slitherine)は販売会社だ。開発ができないわけじゃなくて、確かにできるし、してもいるけれど、Matrixのタイトルのほとんどはゲーム開発会社製だ。WitPは2x3 Games製だし、WiTP-AEはHenderson Field Designs製だ。WitP IIが欲しいって?それなら、開発会社を立ち上げて、仕様を定めて、ゲームデザインを決めて、ちょっとはマーケットリサーチをして、開発チームを立ち上げて、たとえ火の中水の中でもチームをまとめふんどしを締めなおさせ、ひとつの新製品のために努力を注いで、できたものをMatrixにプレゼンテーションする。こうしてみれば、WitP IIができあがるかもしれない。あなたの欲しがっているようなものを開発会社が扱うやり方は、あなた自身のやり方とは違うので、ただ欲しいといってだだをこねているだけでは、お目当てのものは手に入らない。だから、本当に欲しいのなら、首を突っ込んで実現させなきゃ。はっきり言い過ぎてもうしわけないが、ゲームプレイヤーはゲームがつくられるのにマーケットが必要なことに気付いていない。だから、ErikとMatrixをせっつくことはやめて、彼らが新製品に取りかかれるようにしてやろう。真剣に欲しいんなら、真剣になろう。ErikやMatrixやSlitherineや他のメーカーも、ちゃんと機能する新型WitPについては積極的に考えてくれると思う。
これに対して、
やっぱり冷たい現実という壁があるだけなんだ
というレスがついて、またJWEさんが反論
そうじゃない。自分の希望を実現する最良の方法は、世の中のしくみがどうなっているか知ること。「冷たい現実という壁」なんていってるだけではその壁を崩すことはできないし、必要なのは行動なんだ。WitP AEがどんな風につくられたと思っている?Matrixがつくったんだと思う?違う。Henderson Field Designsがつくったんだ。WitPのファン、あなたと同じように要望を持っていたファンがつくったんだ。たしかに、Henderson Field Designsの一員のJoe WilkersonはMatrixの人とのコネを持っていたが、それはWitP AEの販売チャンネルを確保しただけにすぎない。うまくやれば、あなただって同じ販売チャンネルを利用できる。だから、冷たい現実という壁に直面しているのなら、自問してみてほしい。自分は単に欲しがっているだけのクレクレ君なのか、それとも実行するヤツなのか。そして、それにふさわしく動いたらいい。
そして、そのレスに対してのレス
あなたの開発者としての、また著作権のプロとしての見解は分かるし、あなたが正しいことはたしかだが、部分的にしか正しくないと思うので、釈迦に説法なんてことにならないように私の意見を述べたい。Henderson FieldのつくりあげたWitP AEは大好きだが、君たちは一からつくったわけではない。もしそんなことをしていたら、実生活でも忙しい君たちのことだから、今でもまだ開発中だったに違いない。数十年来のゲーム・ウォーゲームを楽しむ側の一員であり、同じくらいの期間ゲーム業界をながめてきた経験があり、IT産業ではないけれども製品開発にたずさわった経験があり、ナショナルブランドの製品の製造と販売の管理を経験があり、ゲーム業界が範をとった著者・出版社関係に本の著者として関わった経験のある人間として、私の見解を述べてみたい。こういった経験からすると、WItP 2に対するきみの提案には異議がある。きみがMatrixと接触した時に、WitPの法的な権利関係やその実際のところがどうなっていたのかは分からないが、WitP2のプロジェクトもそうだが、プロジェクトを成功させるためにはOOBとゲームのアルゴリズムという2つの宝物を入手することが肝心だったろう。これらに対する法的な権利は、2x3か、Gary Grigsby自身か、Henderson Fieldチームか、Matrixか、またはその他の権利者かが持っているが、これらを利用すれば現在のマーケットの状況下でもWitP2の開発が資金的に可能なものになる。WitPやAEのスケールのゲームを考えると、太平洋戦域以上に広範なリサーチを必要とするゲームのテーマはない。また、太平洋戦域ほど多くの種類の戦闘アルゴリズムが必要とされるテーマもない。太平洋は、史上もっとも広くもっとも複雑な戦域だった。これに関するデータを持たずにWitP2プロジェクトを始めようとするスタートアップは、ウォーゲーム業界でも最大規模の運転資金の必要性に直面することになる。AEの数分の一のサイズと複雑さにしか過ぎないWitPでも、Gary Grigsbyと2x3の場合、他のタイトルのロイヤリティ収入とおそらくはMatrixからの運転資金とをつかって、2x3チームがフルタイムで働いた。それにGary Grigsbyの第二次大戦に対する知識とウォーゲームのデザインの経験に加えて、WitPは彼にとって初の太平洋戦域のゲームでもなかった。こういった状況を一から再現するには、多額の資金が必要になる。反対に、権利とロイヤリティー条項の交渉により、MatrixがAEのOOBと、Gary GrigsbyとAEのアルゴリズムの使用とを許可してくれれば、WitP2プロジェクトは劇的に小さなものになる。新たなプロジェクトはUIやグラフィックやプレイヤー体験やAIに焦点をあてることができる。それにはずっと小さなチームでいいし(史実の調査が不要だから)、開発のどんな面に焦点を当てるべきかの議論も不要になるので、端的にコードの検討に集中できる。本の業界では、フィクションの作品のリスク評価は、著者がだれかに100%依存している。つまり、あなたが作品を書き上げて出版社に売り込みに行くことになる。ノンフィクションの作品ではリスクと報酬の関係は反対になっている。編著者があるテーマの本を提案し、時にはその企画書にサンプルとして一つ二つの章が付されることもあるが、そうでない場合もある。編著者がマーケティングの計画を立て、必要があれば協力してくれる執筆者を揃え、出版社に売り込む。どこも受けてくれなければ、その本は実現しない。受け入れてくれる出版社があれば、編著者は執筆する間の生活費にあてる前渡金を受け取る。この後者の方法は、あなたがWitP2について言っている方法と同じだ。しかし、本の業界でも時には第三のやり方がされることがある。最近の出来事とか犯罪事件とか政治問題とかの場合、出版社がその分野の専門家(前国務長官なんてのはふさわしい肩書きだね)にあたって、そのテーマの本の執筆を依頼する。私がWitP2についてMatrixにお願いしたいのはこの方法だ。Matrixは他のウォーゲーム販売業者よりも規模が大きくて資金力もあるから、独自の企画を実現するためのプロジェクトチームを抱えることができると思う。Matrixはこのプロジェクトを安く済ませるのに必要な知的財産を持っているので、損益分岐点を低く抑えることができる。Matrixはこの業界に人脈があって、どのデベロッパーが信頼でき、いま仕事のないデベロッパーがどこなのかも分かる。困難なことだろうか?たしかに困難ではある。リスクが大きい?それは考え方による。しばらくはMtrixもAEの売り上げが続くことを期待できるだろう。でもそのうちに、WitP AEという雌牛も年をとって、ハンバーガー用の牛肉にされてしまう時が来る。Matrixのもつ独占販売権(ほかにも独占販売権を確保しているゲームがあるが)もだんだん売り上げが落ち、ついには全然売れなくなる時が来る。プレスイベントで発表された発売予定リストのゲームがあれば、こういう困った事態を心配しなくてよくなる?フォーラムの当該スレを見ている限り、そうでもないようだ。また、タブレット用のゲームがウォーゲームという小さな業界を飛躍的に拡大してくれる?そんなこともないだろう。タブレットというプラットフォームはゲーム業界一般には市場を確保してくれるかもしれないが、ウォーゲームは現在のプラットフォームで通用しているうちは他のプラットフォームで始めることはないだろう。マーケティングの観点からすると、MatrixはWitP2の関してかなり有利な立場にある。上述したように、太平洋戦域を独自にデザインしようというスタートアップにとっての参入障壁はとても大きい。なので、Matrixは有利に価格交渉を行える。しかも、Matrixのフォーラムの中で最も活発なコミュニティを背景に需要も見込める。新規参入するデザイナーが企画を立ち上げる時、彼は自分が失敗を犯していないことを証明することが必要になるが、MatrixにはWitP2がWitPの続編であってまったくの新らしいゲームではないという信用がある。MatrixはWitPを独占的に販売してきた過去10年の努力でブランドを確立することができた。そのブランドを無駄にしてしまうのはばかばかしい。走って来たウサギがたまたま株にぶつかってくれるのを待つように、WitP2のもたらされることを待つこともやはりばかばかしいことだと思う。MatrixはWitP2をつくる能力があって、天啓を待つ必要はない。今後の発売予定のゲームのリストをみて、Canoerebelさんと同じ感想を持った。私はウォーゲームをプレイしたいんじゃなくて、WitPをプレイしたいんだ。新しいWitPをつくってくれさえすれば、値段が高くなってもかまわない。きっと買うよ。発売予定のゲームのリストの方は、ダメだね。
というかなりしっかりした意見が出されていました。たしかに、Matrix/Slitherine Press Event - 4/23/2012というスレにある発売予定のゲームのリストをみて、ちっともそそられません。やはり私もウォーゲーム一般をプレイしたいんじゃなくて、WitPをプレイしたいくちのひとりなのだと感じます。WitP AEも発売後3年経ち、多くの熱心なプレイヤーのPBEMという名の発売後テストプレイにより欠点も明らかになって来ました。できればそれらを修正した、しかももっと優れたプレイアビリティのUIのWitP2を期待したいところです。でもこれほどの大きなゲームの開発にはかなりの年数がかかるでしょうし、そろそろ開発が始まらないと生きているうちにプレイできない恐れもあります。Matrixが乗り出さないなら、Kickstarterを利用したプロジェクトでもいいから誰か始めてくれないでしょうかね。今日から発売のドリームジャンボ宝くじを買って、一等があたったらそれを呼び水にプロジェクトを立ち上げようかな。
文中にあった、タブレットがウォーゲームに与える影響も気にはなります。iPadはもっていますが、私でもiPadでハードなウォーゲームをしたい気分にはならないので(20インチで重さ500gくらいのiPadが出れば話は別ですが)、PC用のウォーゲームの開発が衰退していってしまうようだと困りますね。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

私はボードゲーム(エポック社のD-day)からSLGを始めましたが、太平洋の嵐DX(無印は未プレイ)やwitpの出来には衝撃を受けました。戦域をほぼフルカバーしつつも戦力や資源を小単位で扱っているのですからプレイしがいがあります。
この辺りの出来具合が私にとって購買するか否かの分水嶺。しかも、嵐DX→witpとハードルはどんどん高くなっているので欲しいゲームが段々と少なくなってきていると感じます。
p.s.
戦記3はwitpには無い工兵による地雷埋設と除去というのに若干そそられていますが…

somali さんのコメント...

コメントありがとうございます。
WitP AEは規模の大きさと、管理しなければいけないパラメータの多さが売りで、取っ付きにくいのはたしかですね。わたしもUncommon Valorをプレイした経験がなければ購入に躊躇していたかも知れません。さいわいグランドキャンペーン以外に、Uncommon Valorを少し素敵にしたソロモン戦のショートシナリオや、珊瑚海海戦、アリューシャンの攻防だけを扱ったショートシナリオもあるので、そこから始めれば買って後悔することはないと思いますよ。あと最短でも5年くらいは、これを超える太平洋戦線ものは出ない気がします。